ジョン・バーリーコーン "John Barleycorn" − バラッドの愉しみ1

こんばんは。
先日自宅を整理していると、古いCDの詰まった箱の中に The Imagined Village 最初のアルバム、The Imagined Village が入っているのを見つけました。
以前 Later with Jools Holland というイギリスの音楽番組で、西洋楽器や民族楽器の入り混じった、なんとも重厚なねじれたサウンドと、大人数での舞台、そして Transglobal Underground や Afro Celt Sound System のメンバーのジョニー・カルシがドール太鼓を叩きながら独特なステップでステージを歩き回るという迫力大のビジュアルに釘付けになったのを思い出しました。
さて、このアルバムの2曲目に「John Barleycorn」というものがあります。これは古くから伝わるバラッドで酒飲み歌。一度聞いたら忘れられない節回しで歌われるこの曲、アルバムでは曲の半ばからポール・ウェラーも特別ゲストとして参加していて、これがまたステキ。この曲はTraffic のスティーブ・ウィンウッドのバージョンがよく知られていますが、実にたくさんのアーティストが歌っています。何を隠そう、つい最近まで私は、この曲が一体何の歌なのか全く知りませんでした。ただ、歌詞にある Little Sir John が一体何者なのかは以前から気になっていました。そういう訳でこれから数回にわたり、この Little Sir John こと John Barleycorn について、そしてこのなんとも魅力溢れるバラッドというものについて、自分も勉強しながら書いていきたいと思います。


 
The Imagined Village の John Barleycorn 


Mike Waterson の歌う John Barleycorn 


 There were three men come out of the west
 Their fortunes for to try,
 And these three men made a solemn vow:
 John Barleycorn should die.
 They've ploughed, they've sown, they've harrowed him in,
 Throwed clods on his head.
 And these three men made a solemn vow:
 John Barleycorn was dead. 

 They've let him lie for a very long time
 Till the rain from hea'en did fall,
 And little Sir John sprung up his head
 And soon amazed them all.
 They've let him stand till Midsummer Day
 Till he looked both pale and wan.
 And little Sir John's grown a long, long beard
 And so become a man. 

 They've hired men with the scythes so sharp
 To cut him off at the knee.
 They've rolled him and tied him by the waist,
 Serving him most barbarously.
 They've hired men with the sharp pitchforks
 Who pricked him to the heart.
 And the loader, he served him worse than that
 For he's bound him to the cart. 

 They've wheeled him round and around the field
 Till they came into the barn
 And there they've made a solemn mow
 Of poor John Barleycorn.
 They've hired men with the crab tree sticks
 To cut him skin from bone,
 And the miller, he has served him worse than that
 For he's ground him between two stones. 

 Here's little Sir John in the nut-brown bowl
 And here's brandy in the glass
 And little Sir John in the nut-brown bowl
 Proved the strongest man at last.
 For the huntsman, he can't hunt the fox
 Nor so loudly to blow his horn,
 And the tinker, he can't mend kettles nor pots
 Without a little barleycorn. 


 男が三人、西からやって来た
 運だめしをするために
 この三人の輩、固く誓いを立てた
 ジョン・バーリーコーンにゃ
 死んでもらわな
 鋤で耕し、種をまき、
 鍬で奴さんを追い込んだ
 頭の上から泥をかけ、
 この三人の輩、厳かに言った
 ジョン・バーリーコーンは死んだ 

 奴らはたいそう長いこと、そのまま放っておいた
 天から雨が降ってくるまで
 するとジョンの若旦那、頭をぴょこんと突き出して
 一同たちまち大慌て
 奴らはそのまま立たせておいた、夏至の祭の日まで、
 白くひょろっとやつれちまうまで
 するとジョンの若旦那、長い、長い髭を生やした
 一端の男になったのさ 

 奴ら鋭い大鎌持ちの男どもを駆り出して
 膝からばっさりやっちまった
 ごろごろ転がし、腰のところで縛り上げ、
 むごたらしい仕打ちをしたものさ
 奴ら尖った熊手持ちの男どもを呼んできて、
 心臓までぐさりとやっちまった
 ところが積み上げ人ときたら、そんなもんじゃなかったさ
 これを荷馬車にぐるぐると、くくり付けちまったんだから

 畑をぐるうりぐるりと引き回り、
 奴らはやっとこ納屋に着いた
 そこで奴らは厳かに、哀れなジョン・バーリーコーン、
 御仁の最期を告げたのさ
 奴らりんごの枝持った男どもを連れてきて
 骨から皮をそぎ落としちまった
 ところがどっこい粉屋ときたら、そんなもんじゃなかったさ
 粉みじんに挽いちまった んだ、ふたつの石の間でな

 ここにジョンの若旦那、栗色のお椀入り
 さあここに、グラスに一杯ブランデー
 かくしてジョンの若旦那、栗色のお椀入り、
 誰よりも強い男だと、ついに証してみせたのさ
 狩人は狐を狩れないどころか、角笛もまともに吹けやしない
 おまけに鋳掛け屋ときたら、やかんも鍋も直せない
 小さなジョン・バーリーコーンがとにもかくにもおらんことにゃ



こうして哀れなジョンの若旦那は繰り返し、繰り返し、虐待を受け、挙句の果てにはなんと、アルコール飲料に姿を変えられてしまいます。さて、このジョン・バーリーコーンとは一体何者?


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